はなをくんくん

2013.02.09.21:15

はなをくんくんはなをくんくん
作:ルース・クラウス / 絵:マーク・シーモント / 訳:木島 始出版社:福音館書店絵本ナビ



 暗くて寒い冬の森、降りしきる雪の中、のねずみもくまも小さなかたつむりも、動物たちは皆しずかにじっと眠っています。音のないモノトーンの世界は、平穏ながらどこか寂しげです。

 突然、みんな目を覚まします。のねずみが「はなをくんくん」。くまもかたつむりも「はなをくんくん」。眠りから覚めていっせいに駆け出す動物たち。どんどんどんどん駆けて行く先には、いったい何があるのでしょう。ページをめくる指先ももどかしくワクワクします。

 皆がやっとたどり着いた原っぱには、小さく可愛い春が待っていました。

 草も花も枯れ果てた冷たい冬でも、地面の下では、新しい命の芽が育まれていたのです。辛くてしんどいときも、神様の恵みはちゃんと土の中に用意されていて、暖かい春は、大きなくまにも小さなかたつむりにも、そしてわたしにもちゃんとやってくる、そんな希望と命のよみがえりが感じられる1冊です。

 全部読んでから表紙を見ると、動物たちが小躍りしている理由がよくわかりますよ。(Y.Y)

ふゆめがっしょうだん

2013.01.24.20:37

ふゆめがっしょうだんふゆめがっしょうだん
作:長 新太 / 写真:冨成 忠夫 茂木 透出版社:福音館書店絵本ナビ



これは、科学絵本・写真絵本の傑作!

冬枯れの樹木を観察したことありますか?よく観てみると、ちいさな冬芽が顔を出しています。葉に養分を送っていた管の断面ひとつひとつがユニークな顔の形をしていて、合唱しているかのように見えるのです。

この絵本に出会うまで、冬芽の表情がこんなに豊かでユーモラスで可愛いものだったとは知りませんでした。
早速外に出て、桜の木の冬芽を探してみたら、ホント!小さな目と口で笑ってるのや、怒っているのや…動物の顔に見えたり、友達の顔に見えたり…。

神様が作られた自然はなんて不思議で素敵なのでしょう。 一つ一つの小さな命の息吹が愛おしく思えてなりません。

寒い日が続きますが、晴れた日には温かくして、身近な冬芽を探してみませんか?希望の春に向かって「パッパッパッパ♪」と歌いたくなりますよ。(Y.Y)

手ぶくろを買いに

2013.01.14.12:08

手ぶくろを買いに手ぶくろを買いに
作:新美 南吉 / 絵:黒井 健出版社:偕成社絵本ナビ




「お母ちゃん、お手々が冷たい、お手々がちんちんする」という子狐に母さん狐は手袋を買ってやろうと思いました。

かつて人間に怖い目にあわされた母さん狐は、子狐の片手を人間の子どもの手に変え、町の帽子屋さんにひとりで手袋を買いに行かせます。

「決して、こっちの手を出しちゃいけないよ、こっちの方、ほら人間の手の方をさしだすんだよ」と母さんに言われていたのに、子狐はうっかりと狐の手の方を出してしまいます。

1943年に書かれた有名な童話です。あらためて読んでみると、「濡れて牡丹色になった両手」「パン粉のような粉雪」「風呂敷のような影」…美しい日本語の響きが新鮮で心地よく、黒井健さんの柔らかな絵がその情感を盛り上げて、冬の絵本なのに胸の中が温かいものでいっぱいに満たされます。

人間はちっとも恐くないという子狐と、人間はほんとうにいいものかしら?とつぶやく母さん狐。子狐やすべての子どもたちが出会う人たちが、ほんとうにいいものであってほしい、私たち自身もほんとうにいいものでありたいと強く思います。(Y.Y)

ぼちぼちいこか

2012.11.29.19:28

ぼちぼちいこかぼちぼちいこか
作:マイク・セイラー / 絵:ロバート・グロスマン / 訳:今江 祥智出版社:偕成社絵本ナビ



「ぼく、しょうぼうしになれるやろか」かば君は、消防士、ふなのり、パイロット、バレリーナ、ピアニストなど、いろんな職業に挑戦するのですが、どれもこれもその体格の良さと力の強さが災いして、「なれへんかったわ」と失敗の連続。カウボーイ、サーカス、水泳選手、運転手…これだけ失敗すれば、くじけて泣いて落ち込むかと思いきや、かば君は、とぼけた表情で全く懲りずに次のステップを目指します。

反省とか意地とか努力とか根性とか、そういう言葉とは無縁のひょうひょうとしたかば君を見ていると、いつもあせってイライラしてしまう自分が、あほらしく思えてくるのです。

関西弁で「ぼちぼちいこか」という場合、「ぼ」にアクセントがあれば「そろそろ行こうか」、「ち」にあれば「ゆっくり行こうか」の意味になりますが、この本は「ち」にアクセントで読んでくださいね。

外国の絵本なのに、関西弁に翻訳したことで、原作よりも味わいが数倍アップしている一冊。
忙しかった一週間が過ぎた土曜の午後、テレビからふと流れてきた吉本のテーマ曲を聴いたときのような脱力感と幸福感が味わえます。せわしない師走のひとやすみにどうぞ。(Y.Y)

ことりをすきになった山

2012.10.02.18:20

ことりをすきになった山ことりをすきになった山
作:アリス・マクレーラ / 絵:エリック・カール / 訳:ゆあさ ふみえ出版社:偕成社絵本ナビ



 荒れ果てた野原にぽつんとそびえる岩山は、太陽と風の他は、雨や雪の冷たさしか知りませんでした。ある日、岩山に一羽のことりがやってきます。ことりの温もりに初めて触れた岩山は、そのやわらかさに驚き、また来てほしいと頼みます。ことりは、毎春、岩山を訪れることを約束して飛び立ちますが…。

 願うこと、待つこと、約束を守ること、続けること、そして使命を伝えていくことの大切さを教えられます。山とことりの関係は、読む人によって、様々な形に見えるでしょう。 友達、恋人、家族、自然と人、被災地とボランティアにも…。

 相手を愛おしむ気持ちが互いを生かし、長い時間をかけて豊かに変えられていく世界を多くの子ども達に知ってほしいと思います。そして岩山が流した悲しみの涙こそが、緑の種を育てるきっかけとなったことも。エリック・カールのコラージュの色合いが、ページが進むにつれ鮮やかに変わっていきます。いろんなエッセンスがぎゅっと詰まった1冊です。(Y.Y)


ピヨピヨスーパーマーケット

2012.08.31.23:01

ピヨピヨスーパーマーケットピヨピヨスーパーマーケット
作・絵:工藤 ノリコ出版社:佼成出版社絵本ナビ



 小さい子を連れての毎日のお買い物はたいへんです。一人でもたいへんなのに、5羽のピヨピヨちゃんたちを連れて、ニワトリのおかあさんはスーパーマーケットへ。

 おかあさんが、ばったり出会ったママ友とおしゃべりを始め、特売の牛乳に気を取られている隙に、子どもたちは、かくれんぼを始めたり、好きなお菓子をどんどんカゴに入れてしまったり…。子どもたちの行動とお菓子に対するむき出しの欲望が、リアルな親近感に満ちていて随所でクスッと笑えます。あるある!こんなことある!と誰もが思うことでしょう。

 近所のスーパーは、一番身近な社会見学先。陳列棚に並ぶ商品からも、ひっくり返ってダダをこねている他の親子からも学ぶことはたくさん。

 レジでは、もちろんカートいっぱいのお菓子を買ってもらえるわけはなく、ブーっと不機嫌なピヨピヨちゃんたちの表情も可愛くてたまりません。

 お母さんがスーパーでお菓子ばかりを買わないわけは?にわとり家の団欒は、私たちが普通に過ごす一日と重なり、その幸せを愛おしく思える一冊です。(Y.Y)

ふしぎなナイフ

2012.07.09.22:04

ふしぎなナイフふしぎなナイフ
作:中村 牧江 林 健造 / 絵:福田 隆義出版社:福音館書店絵本ナビ



 表紙には、なんの変哲もない普通のナイフが一本。「どこがふしぎやねん?」と、ページをめくると、「えええーーーー!?」と目が釘付けになります。そこからは、ふしぎなナイフの一人芝居!誰もがその舞台にひきこまれていきます。
「まがる」「ねじれる」「おれる」「われる」・・・。「わあ!」「ええ~~!?」「ありえへん~!」

 人は、まだ小さな子どもでさえも、既成概念にとらわれて生きているんだなあと感じます。日常的に身近にある無機質な物が見せてくれる予想外の姿に、固まりかけた頭が柔らかくほぐされていきます。

「きれる」「ちらばる」「ちぎれる」「とける」…、ひとつひとつの言葉は、変化したナイフの質感と結びつき、その感触のイメージが、目の前に頭の中にいっぱいに広がるのです。

 聞いている子どもたちは、目をキラキラさせてワクワクドキドキ。読む方は手品師の気分になれるんですよ。(Y.Y)


あおくんときいろちゃん

2012.05.12.11:12

あおくんときいろちゃんあおくんときいろちゃん
作・絵:レオ・レオニ / 訳:藤田 圭雄出版社:至光社絵本ナビ




 春、新しい出会いをした皆さんは、新しい友達がたくさん出来た頃でしょうか?子ども文庫でもお友達同士で1冊の本を仲良く覗き込む微笑ましい光景が見られます。

 1967年にレオ・レオニが孫たちにお話をせがまれて偶然に生まれたというこの絵本、45年経った今読んでも新鮮な感動に満たされます。

 仲良しのあおくんときいろちゃんは、出会えた嬉しさいっぱい。飛んだりはねたりして遊んでいるうちにみどりになってしまいます。帰った家では「こんなみどりの子、うちの子じゃないよ」と言われて、泣いて泣いて、涙になって、またもとのあおくんときいろちゃんに戻るというお話ですが、単純なあおときいろの切り絵をじっと見ていると、うれしい表情や悲しい表情が浮かんで見えるのが不思議。
 
 あおときいろの2つの色が混ざって新しい色が生まれるように、人と人との心も溶け合って平和な色が出来ればいいなあと思います。(Y.Y)


ラチとらいおん

2012.04.29.19:35

ラチとらいおんラチとらいおん
作・絵:マレーク・ベロニカ / 訳:徳永 康元出版社:福音館書店絵本ナビ



 犬も暗い部屋も友だちさえもこわい「せかいじゅうで いちばん よわむし」の男の子、ラチ。そんな彼のもとに、ある日、小さくて赤い「らいおん」が現れました。ちっぽけならいおんに何ができるかと思ったラチでしたが、らいおんに鍛えられてどんどんたくましくなっていきます。らいおんさえいれば、ラチにはこわいものなんてなくなりました。そして、ラチが十分に強くなったとき、らいおんは…。

 この絵本を最初に読んだとき、子どもの頃の自転車の練習を思い出しました。補助輪を外したばかりの自転車、後ろの台をしっかりと誰かに支えてもらっていると信じてペダルをこいでいたのに、ある日、気が付けば自分ひとりで乗れるようになっていました。

 誰かに支えてもらっている安心感と、その支えによって強くなれた喜びは、また別の誰かを支えていく優しさにつながっていくのかもしれません。自分を変えていく勇気は、本当は誰のポケットにも入っているものなのだと気づかされます。

 単純な線で描かれた小さい赤いらいおんは、1965年出版とは思えない可愛らしさです。
ラチとらいおんこそ、のび太とドラえもんの原点だったのかもと思わされた一冊。古びた表紙の中には、今も昔も変わらない憧れが詰まっています。(Y.Y)


おおきくなるっていうことは

2012.04.02.22:26

おおきくなるっていうことはおおきくなるっていうことは
作:中川 ひろたか / 絵:村上 康成出版社:童心社絵本ナビ



 おとなは「おおきくなったね~」と子どもたちに声をかけてしまいがちですが、子どもって、自分ではぴんとこないこともあると思います。

「おおきくなるっていうことは…洋服が小さくなるっていうこと、新しい歯が生えてくるっていうこと、水に顔を長くつけられるってこと、あんまり泣かないっていうこと…」

 この本には、おおきくなるっていうことはどんなことかが、子どもの視点で、共感できるように書かれています。

 「おおきくなるっていうことは たかいところからとびおりられるってこと」「とびおりても だいじょうぶかどうか かんがえられるってこと」

 まだ小さな赤ちゃんが、くるりと後ろ向きになって段差を降りる姿を見ると、「あ、ちゃんとわかってるな~」と思わず笑みがこぼれ、自分で学んで少しずつ大きくなっているんだなあと思います。

 一番幼かった子が、小さな子の手を繋いであげたり、絵本を読んであげる姿を見かけるときには「おおきくなるっていうことは ちいさなひとにやさしくなれるってこと」というフレーズが心に響いてくるのです。

 この本、実はおとなが読んでも意味深いメッセージがいっぱい。年を重ねることが素敵なことだと発見できるんですよ。

 桜が咲くと、またみんな自分のペースで、一つおおきくなる春。子どもたちの成長をいっぱいほめてあげましょう。(Y.Y)


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